今回は、石橋商会様のロゴマークの制作工程を、ロゴ制作の事例としてご紹介します。
1.会社ロゴは何のためにあるのか
まずは、前置きとして「会社ロゴは何のためにあるのか」について解説していきます。
会社のロゴは企業のイメージに直結し、会社の存在価値を高めるために、重要な役割を果たします。
会社設立時のほか、設立後に事業をさらに躍進させるため、あるいは事業形態・ブランドの一新、周年記念などの節目にロゴを作製・リニューアルする企業は少なくありません。
会社のロゴとは、言わば会社の顔です。ロゴで社名や思い、社風を表します。
会社を覚えてもらい、他社との違いを表しますす。
会社のロゴはお客様に自社を認知してもらうものであり、自社の看板でもあり、うまく活用すれば、会社を成長させる大きな要素となります。
お客様に「安心感」「サービスへの信頼」を与える力があり、社員にとってはお客様の信頼を得続ける努力をするための原動力となるものです。
2.今回のロゴ制作依頼内容
今回のご依頼は、会社イメージを形成するためのご依頼でした。
まず「石橋商会様はどういった会社なのか」を紹介します。
福岡市のごみ収集をしている会社です。
福岡市のごみ収集は、夜間に収集する全国的に見ても非常に珍しいスタイルです。
これは政令指定都市で日本唯一です。
夜間に収集することで、動物からゴミを荒らされる被害を減らせるだけでなく、防犯対策にもなるといったの利点があるほか、朝の忙しい時間に出すことがなくなるため、市民の満足度が90%以上と非常に高い政策となっています。
また、夜間収集のため収集作業中に大きな声を出さずに済むように、収集車の後ろにマイクが搭載されているほか、収集車の騒音を減らす工夫もされています。
市のごみ収集を行っている業態や、創業から長いことから他の企業や利用者様との接点が少なく、会社イメージを形成を行ってこなかったそうです。そのためロゴがなく、明確な理念が設定されていなかったとのことでした。
今回、もっと社会と関わりを広げていこうという思いとともに、社員たちにとってもさらに胸を張れる会社にしていこう、という企画の元の依頼でした。
そのため理念や想いを形にするよりも「現在の仕事をロゴで表現できないか」という形でデザインを進めていくこととなりました。
それに伴い
「なぜ現在の業務を行っているのか」、
「その業務を通して何を行って、今後どうして行きたいのか」
などをヒアリングしました。デザインの方向性は「会社としての歴史は長いが古臭いイメージにはしたくない」との要望がありました。
3-1.ラフデザインの考案
まずは手書きで、ラフデザインを作っていきます。
お客様との打ち合わせの結果を元に作っていきますが「その他に良い案がないか」も含めて考えます。
今回は、ごみ収集をビジュアル化しつつも、ごみ収集だけの表現にならないこと、石橋商会様がごみ収集を通して社会にどのように貢献しているか、石橋商会様がどんな会社なのか、などを要点として考えていきます。
手書きだけで数十パターン作成し、データ上でも数パターンデザインを作成します。
上図は廃案ですが、繋がりを表現したものや、ゴミ袋とりんごを合わせたようなデザインにしたもの、石橋商会をローマ字のIshibashi Shoukaiにした際の頭文字isを人と人が寄り添うようにデザインしたものなど、さまざまな形を検討しました。
3-2.デザインの方向性の確定のため初稿提出
多くのラフデザインからデザインを絞り、データとして仕上げたものを提出します。
下図が提出させていただいたデザインです。1つ1つ説明します。
A案
デザインコンセプトは「みんなが一人のために一人がみんなのために」と躍進です。ゴミ袋の形状でデザインしました。
ヒアリングの際に何度も話に出てきた「みんなが一人のために。一人がみんなのために」の想いをデザインに採用したものになります。
ロゴ中心の赤い丸が石橋商会様を表しており、向かって力が集まるさまと赤い丸から力が拡散するイメージを合わせました。赤い色は、社会システムを支える石橋商会様の強さを表しています。また全体像は回収されていく袋を表現し、石橋商会様の仕事を表しました。上部に飛び出した部分は躍進をイメージしたものです。やや立体的なデザインは、業界イメージから遠いものをデザイン化しました。
B案
デザインコンセプトは石橋商会様がごみ収集の際に行き交う道と、その道がクロスすることでつながりを、全体の形で「石」を表しました。
四角形が街(MAP)を意味し、それを分ける白の線は道を表現しています。石橋商会様が道を通ることでごみが回収され、街が鮮やかになることを表現しています。また絡むように交差する道はつながりを意味しており、街に住まう人々や街そのものとのつながりを表しました。
全体の形状は「石」の文字を図形化したものです。
C案
デザインコンセプトは、馬と収集車を単純化して組み合わせたものです。たてがみを流し右を向く馬は「進化を続ける」を意味しています。
※背景
石橋商会様の現状と創業のきっかけが、デザインの背景となります。
創業のきっかけは、農業を営んでいた石橋商会の創業者が近隣住民のために自前の馬車でごみを集積所まで運んでいたことです。周りを想い行動したことが、結果として今の事業につながっています。現在の石橋商会は、住み良いまちづくりのための夜間収集を行い、騒音などにも気を遣い、収集車の改良などを行っているのです。
石橋商会様の創業時の馬車をデザインに組み込み、創業時の「周りの人のために」という想いを忘れないようにロゴに採用しました。また、現在収集車に形が変わっても進化を続けていることを左下のパーツで表現しています。全体は今後も進化し続けることを表現しました。
D案
デザインコンセプトは「みんなが一人のために。一人がみんなのために」という思いと、人と人がつながるイメージを明るいカラーで表したものです。
「古いイメージにはしたくない」との要望を受けていたので、全体的には明るくカラフルなイメージになるようにデザインしました。全体像は集まるようにも広がるようにも見えるようにデザインし「みんなが一人のために。一人がみんなのために」を表現しています。また個々の色が人を表現しており、さまざまな人がつながることで石橋商会様ができていることを表現しました。
初稿でしたが、ロゴに変更はなくB案で決定しました。
3-3.今後の利用を考えキャッチコピー(タグライン)を追加
ロゴがB案で決定したあと、実際にロゴを使う際にキャッチコピー(タグライン)を入れたいという追加の要望がありました。この段階で石橋商会様の社内でも理念に近いものが出来上がってきており、それをタグラインに使うこととなりました。
漠然と決まった内容があったものの「どれをキャッチコピーに使うか迷っている」状態でした。そこで現在の候補をすべて教えてもらい、石橋商会様と株式会社エンドラインの担当チームで選定することにしました。いただいたタグライン案は、どれも伝えたいことは同じで表現方法が違う、漢字と平仮名の使い方が違うといったわずかな違いでした。
全部で15種類いただきましたが、一つ問題がありました。どのタグラインにしても「長すぎる」ということです。そこでいただいた15種から最も短く表現できているものを、株式会社エンドラインの担当チームでさらに簡潔に調整しました。さらに石橋商会様の「どうしても外せない要素」を再確認し、調整したものを最終的なタグラインとして採用しました。
3-4.デザインの決定、使い方に迷わないように仕様書提出
デザインが決まったら、使用時に困らないように仕様書を作成します。
ロゴを使う際は、横長の空間か正方形に近い空間かで使いたい形が違ったりするため、ロゴを使用したい空間に合わせた使い方も用意します。縦書きの使用も想定されるため、その例も用意します。
そのほか禁止事項、注意点を記載します。
最低限の仕様書を提出しました。実際の運用を考えると膨大なページ数がある仕様書ではなく最低限の仕様書がある状態から、あとは企業と担当デザイナー様に任せるのが適切だからです。
4.ロゴに合わせて名刺を作成
ロゴが変わったので、合わせて名刺のデザインもご依頼いただきました。
複数案を提出させていただき、最終的に上図のデザインで決定しました。
縦長の名刺に横書きというスタイルです。
縦長の名刺に横書きはすっきりした印象のデザインにまとまりやすく、見やすいデザインなのです。
ロゴを作った会社に名刺やその他のツールを頼むと、想いや仕様関係が分かっているので非常にスムーズにデザインが進みため、おすすめです。
まとめ
今回は、石橋商会様のロゴと名刺をデザインさせていただきました。
ロゴを作る・考えるのは簡単な作業ではありません。
しかしロゴは、会社にとって重要な要素です。
大変だからと作らないままでいたり、時代に合わないロゴを使い続けるのはお勧めできません。
まだロゴがない、変更に戸惑っている方はロゴの作成をお勧めします。
ロゴ制作は簡単ではありませんが、きっと楽しいものになります。自社のことを改めて考え、顧客のことを考えることで成長につながるだけでなく、自社への自信にもつながります。
ロゴをご検討の方は、ぜひエンドライン株式会社にご相談ください。きっと、ワクワクできるロゴができるはずです。