こんにちは。ライターの大塚たくまです。
※福岡のライターさん大塚さんにインタビューしていただきました
プロスポーツの試合会場に行くと、のぼりや旗、垂れ幕など様々な装飾があります。「こんなことにお金を使うなら、チーム運営にお金を使えばいいのに」と思うこともしばしば。
実際、試合会場の装飾って、効果あるの?
そこで、スポーツの試合会場の装飾を手がけている、エンドライン株式会社の山本社長に詳しいお話をうかがいました。
試合会場の装飾って、深い意味はないでしょ?
試合会場の装飾って、何かないと寂しいから雰囲気でやってるって感じに見えるんですけど……。
なんてこと言うんですか! そんな軽い意味合いではないですよ。「雰囲気」と言いますけど、「雰囲気」は重要です。
でも、別になくてもいい気がするんですよね。装飾に力を入れていれないと、どんな問題が起こるんですか?
バスケットボールの例で言うと、中の装飾をしないと、体育館が丸出しになってしまいます。
「丸出し」という言葉を「体育館」に使う日本語用例を初めて体験しました。どういうことですか?
体育館を丸出しにしてしまうと、試合観戦をしているのに、トレーニングに勤しむ市民の姿が窓から見えちゃうわけですよ。
えっ、Bリーグの試合が開催されている時に、体育館は普通に市民向けにも稼働しているんですか。
はい、体育館は市民の皆さんのものなので。その姿がBリーグの試合中にお客様に見えてしまうと……。あまりに日常的すぎて、ちょっとかっこよくはないかなと。
あー、たしかに。「市の体育館だったわ」と現実に引き戻されるような……。
そうでしょう。プロバスケットボールの試合を開催するときは、体育館はチケット代を払わないと入れない空間です。空間の満足度を上げるという意味でも、装飾の効果は重要です。
そんなこと、考えたこともなかったです。プロのバスケットボールの試合専用の体育館があればいいんでしょうけど……。
そこまで資金力のあるチームはありませんから……。装飾で工夫して、空間をつくっていく必要がありますね。
「市の体育館」って雰囲気をなくすということであれば、かなり大掛かりな装飾がいるということですか?
いえ、逆に簡易的なものじゃないとダメですね。翌日には体育館を市民のみなさんが使いますので、元に戻さないといけません。持ち運べるとか、跡が残らないとかが重要になります。
簡易的なもので、「市の体育館」っぽさをなくすっていうのは……。大変ですよね。
だからこそ、私どものような専門業者が存在するわけです。
なるほど。ようやく、どういった事業なのかが理解できてきました。
体育館の装飾って、どんなことをするの?
実際の装飾
体育館の中の装飾って、どんなことをやるんですか?
装飾に力を入れているところだと、会場内に「バーン!」とデジタルサイネージがあって、見ごたえがありますよ。装飾に力を割けないところだと、ほぼ体育館そのままに近いところもあるのが実情ですね。
体育館の中の装飾で、どこでも大体やっている「定番」って、あるんですか?
グッズ売り場用の装飾とか、体育館内にスポンサーのロゴを持った選手のボードを並べるというのは、よくありますね。こういったものは簡易的に持ち運べるんです。
すぐ撤去できる、採用しやすい装飾なんですね。
あとはこの、壁みたいになるバナーですね。これは体育館っぽく見せないように装飾します。更衣室やトイレなど、体育館のゴチャついたものを隠す目的があります。
これで体育館っぽさを軽減させるんですね。
体育館にある年季の入った汚れがある壁とか配管とか、立ち入ってはいけない通路とか。そういった「現実」を隠します。
非日常の演出って、大変なんだなぁ。でも、重要ですね。
さらに、誘導の目的もあります。お客さんを誘導する際に、道を塞ぐときにただ塞ぐのではなく、装飾しようという発想ですね。
たしかに、そこに「立ち入り禁止」の張り紙ではなく、チームのエンブレムがあるだけで、全然雰囲気は変わりますもんね。
他にも防球フェンスをスポンサー枠にしたり、選手が入ってくるところに設置するフラッグにスポンサー枠を設けることもやっています。
スポンサー枠の有効活用の提案もされているんですね。とにかく使えるところは使って、装飾やスポンサー枠にすると。
そうですね。頭を使って工夫しないといけないと思います。誘導に関しては、上手にできていないチームも多いので。
誘導は大切ですよね。とくに初めて来た人は「どこに座ればいいんだ」と迷って困るだけで、かなりリピート率は下がる気がする。
「このチケットはここまでしか入れません」とか、そういう決まりがわかりにくい会場が意外とあるんですよね。
その状況で案内もうまくいかなかったら「自分のような初心者は場違いなんだ」と思っちゃうかも。座席表を配布したり、何か対策はできそうですけどね。
定番の試合会場装飾は「のぼり」
どのチームでもほぼ確実にやっているような、定番の装飾は何でしょうか?
会場の外に立てる「のぼり」ですね。選手の写真付きのものが定番です。
あー、たしかにイメージありますね!
のぼりに関しては、私どもでスポンサードしているチームには、弊社のロゴが入ったのぼりを無料で差し上げるということもしています。
会場外の装飾を優先するのは、どのような意味があるのでしょうか?
「ここがバスケットボール会場だ」と認識してもらう意味合いですね。ただの体育館だと「本当にプロバスケットボールの試合会場なの?」と不安になるじゃないですか。
たしかにそうですね。何も書かれていない体育館に入っていけないな……。
最近は「試合を開催していることを知らせるのぼりを立てましょう」と、提案しています。体育館って、だいたい市街地にあるじゃないですか。歩いている人に「今やってます」と訴求するのは大事だと思うんですよね。
選手の写真と背番号ののぼりだと、今日が試合開催日とまではハッキリとわからないもんな……。
そののぼりを見て、一人でもチケットを買って入場してくれたらラッキーですよね。そもそも「へぇ、今試合をやってるんだなぁ」と散歩中の人に気づいてもらうだけでも、プラスじゃないですか。
ずっと選手のぼりについて思っていたことがあるんですけど……。のぼりにいろんな選手載せるじゃないですか。
そうですね。いろんな選手を載せますね。
全く選手を知らないチームだと、逆に覚えられなくないですか? 誰か1人を多くするとか、チームとして推す選手がいた方が覚えやすい気がします。
あー……。たしかに。たとえば、20枚あったら10枚をエース、10枚をその他の選手にするとかですか。
そうそう。アイドルでも「センター」っているじゃないですか。そういうのがあると、のぼりの意味が増す気がします。
誰を覚えたらいいのか、わからないですもんね。アリかも……。
のぼりに「背番号」「名前」「写真」みたいに決まってるのも、面白くない気がするんですよね。もっと個性出してもいいかと。
なるほど。趣味とか、好きな食べ物とかのぼりに書いてても面白いですね。「親子丼が好きです!」とか。
いいですね。それは覚えるな。「あ!親子丼の人だ!」って、覚えそう。出身地を書くとか、見て欲しいプレーを書くとか。
吹き出しで「ドーン!」とね。いいかもしれませんね。やってみたいな。
あとはちょくちょくのぼりを変えるとか。2ヶ月に1回くらい。そしたら、いろんな攻めたのぼりも作りやすくなるでしょう。シーズンに1種類だと守りに入るから。
たしかに! それもアリですね。既存ファンは変化を楽しみ、新規ファンはそこから応援する選手を見つけられますね。
今、試合会場で注目の装飾とは?
装飾備品の中で、かなり高価なものってあるんですか?
エアアーチは、ラインナップの中では高価で、約18万円します。高価ですが、人気商品ですよ。かなり多くのチームで使われています。
エアアーチ
やはり、会場外の装飾は需要が高いんですね。
やっぱり試合前には、エアアーチをくぐってほしいですね。ここからが「非日常」の始まりという、境界線の役割を果たしてくれます。
楽しむスイッチを入れてくれる役割がありますよね。高いと言っても、約18万円程度。ずっと使えることを考えると、そんなにとてつもなく高額というわけではありませんね。
そうだと思います。設営も簡易的で便利なんですよ。持っていって、中の送風機の電源を入れたら、数分で膨らみます。電源を抜けば、すぐしぼみますし。男性2人程度で持ち運べます。
へぇ、それは便利ですね! ちなみに他に、新商品って、あります?
他の販促の現場では使われていたけど、スポーツの現場では使われていなかったという類のものにはなるんですが……。マスコット型のエア看板です。
おおおお〜、すごい。これもまたインパクトありますね。写真撮影したくなる。これはいくらぐらいするんですか?
約15万円ですね。最近はこれ、よく注文が入りますね。
約15万円ですか。その価格なら、ファンの有志で出すこともできそうですね。子どもが喜ぶわけですし。写真として思い出に残る確率が高まるわけだし……。
たしかに! クラファンを考えてみるのもアリかもしれませんね。こういう装飾物の前で、子どもが写真を撮っているのをみると、めちゃめちゃ嬉しいんですよね。仕事のやり甲斐を感じる瞬間です。
なるほど。これからも試合会場にエンドラインあり!ですね。
試合会場が満員になってほしいと思います。ぼくらができることは限られていると思うんですけど、装飾を見てワクワクして「また行きたい」と思ってもらえるような空間作りができたらいいですね。
今日は貴重なお話をありがとうございました!
試合会場の装飾は大きな意味を持つ
これまで考えたことがないベクトルで試合会場について考えることができました。装飾の世界って、面白いですね。
次にプロスポーツの試合を観に行った時は、工夫を凝らした装飾物を探してみるのもまた、面白いかもしれません。これからもエンドラインの挑戦は続きます!